凝灰岩の一種だそうですが、風化しやすそうな脆さを隠さず色は灰色の砂浜の色に土の肌色に近い茶色を混ぜた感じ。基本的にはやわらかで切り出しやすく加工しやすい性質です。もちろん、切り出された場所によって、固めであったりクリーム色から灰色に変化する途中の多様な色合いのものがあります。
自然な風化の結果としてできた横穴を加工して埋葬所としたり、横穴に供養塔(鎌倉石で作ることも)が納められたり、岩肌に仏像を彫り込みました。画像は鎌倉の天園ハイキングコースです。
古い建物の礎石にも利用しやすかったようです。明治でしょうか古い不動産開発で区画を分ける低い塀によく使われたり、戸建の道路との境界塀などにも多用されました。生活の場所近くに産しそれほどには高価ではなかった材料でした。景観を守ろうあるいは美しい景観を作ろうとの意識はなくても、そして人工的な作業結果であるにも拘らず、利用しやすい材料を生活に活かしたら土と空と緑の組み合わせに溶け込んだということだと思います。雨が降っているときや降りやんだ後には、染み入る雨で石の色が濃くなり、なお一層自然の中に引き戻される感じがします。古い塀を形作った鎌倉石の石材(木ではないですが古材)は供給が限られます。やわらかいものの場合、風化の結果ぼろぼろになり始めているものがあります。そのようなものはさておいても、きれいに切り出され鑿の跡が残る固めの古い鎌倉石は風情の良さと希少性からなかなかに高価なものになってしまいました。
鎌倉時代から信仰を集めたお寺が丹沢の麓にあります。そのような凝灰岩の山肌なのだと思います。その山肌に元からあった自然なうねりに手を加えた寺への参道や古い道。そこに覆いかぶさる古い樹木、歩く人がそれほどには多くないので広がる苔、それでも人の往来のためにゆっくりとすり減った階段状の彫り出しとそれを補強するやや硬い石。そのような道(神奈川県伊勢原市の日向薬師参道)の写真です。日向薬師(ひなたやくし)には平安時代から鎌倉時代に作られたすばらしい仏像が数多くあり、多くの方が紹介していらっしゃいますのでここではすばらしいということだけ申し上げます。お寺のホームページのリンクを貼ります。https://www.hinatayakushi.com/ 仏様を拝みに行っていただきたいのですが、その際にはこの参道を歩くことになります。